「K-POP紅白」批判がお門違いのワケ 旧ジャニーズ排除で見えた日本エンターテインメントの欠点
2023年の大みそかに放送された『第74回NHK紅白歌合戦』が、「K-POP紅白」だったと批判を招いている。しかし、その批判はかなり的外れだろう。
昨年の『紅白』は44年ぶりに旧ジャニーズ勢が出演せず、かなり異質だった。しかし、石川さゆり、坂本冬美といった大物歌手や、YOASOBI、Ado、Official髭男dismといった人気アーティストが出演し、そのパフォーマンスが話題を集めた。
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だが、どうしても目を引くのがSEVENTEEN、Stray Kids、LE SSERAFIM、TWICEの日本人メンバーで構成されたMISAMOといったK-POPアイドル勢。また〝K-POP資本〟という視点で考えると、韓国のオーディション番組発のJO1や、日韓共同のオーディション番組から誕生したNiziUも、同じ枠といえるだろう。
さらに、K-POPのフォーマットを取り入れ、2年連続で出場を果たしたBE:FIRSTも同じ括りだということができるかもしれない。
「NHKは『紅白』出演者の選考基準を『今年の活躍』『世論の支持』『番組の企画・演出』が中心だと明かしており、その視点で見ると間違っていない。日本人でインスタグラムのフォロワー1000万人突破しているのは、MISAMOのモモとサナ、LE SSERAFIMのSAKURAこと宮脇咲良、あとは渡辺直美の4人だけです」(芸能ライター)
日本国内で完結するシーンがもたらした弊害
昨年は、世界最大級のコーチェラ・フェスティバルで、BLACKPINKがガールグループ&K-POP史上の初ヘッドライナーを務めて話題になった。「BLACKPINKのYouTubeチャンネル登録者数は9250万人。韓国の人口が約5100万人だと考えると、いかに世界の市場で戦えているかがわかります。また同じ事務所のBABYMONSTERはデビュー曲『BATTER UP』が公開わずか4週間で1.2億回再生。BABYMONSTERは2人の日本人メンバーがいますし、国内でデビューせず、海をわたって爆発的人気を獲得している若者は多いです」(同・ライター)
なぜ日本と韓国のエンターテインメントでここまで差がついたのか。それは2010年ごろの特典商法が原因だと言われているが、その指摘も間違っているという。
「オリコンが発表した2010年の音楽ソフト年間ランキングは、トップ10をAKB48(4曲)と嵐(6曲)の2グループが独占しました。このころから握手券ビジネスや複数枚ビジネスが横行し、CDがオマケだという指摘が相次ぎ、日本の音楽シーンが崩壊したと嘆く声が広がっていました。しかしK-POPも同じような特典商法で売り上げを伸ばしている側面があります。やはり違うのは、楽曲やパフォーマンスのクオリティ。世界最大の音楽市場であるアメリカで本格的にダンスミュージックが流行り、ダンスミュージック主体のK-POPが受け入れられやすかった環境もあるでしょう」(同)
日本最大のエンターテインメント事務所であるSTARTO ENTERTAINMENTの新社長・福田淳氏は週刊文春のインタビューで、旧ジャニーズ事務所から退所したタレントと、自社タレントの共演について《全くOKです。共演NGといったって、それって『(芸能事務所がいくつもある)港区の話』でしょう。我々は韓国と戦ってグローバルに打って出なきゃいけないのに、そんな狭い港区レベルの話をしてどうするんですかって。みんなが良いと思った組み合わせでやればいいし、お互い高め合うような取引だったらいいと思います》と語っている。
それでも「K-POP紅白」という批判が続出する原因は…。
「単純に批判している人たちが、メインストリームの音楽を知らないだけでしょう。音楽ストリーミングやSNSの発達・普及によって、音楽シーンは急速に、モザイク状に変化しています。もちろん、そもそもグローバル戦略を狙っていないアーティストも多いでしょうし、どちらが正しいかは一概に言えません。グローバルシーンでは何回も死んでいる〝ロック〟というシーンの価値観が、日本市場では生き続けていますからね。昨年の『紅白』にはクイーン+アダム・ランバートも出演しましたが、彼らの出演に批判的な声は少なかった。なぜ韓国系アーティストには批判が多く、欧米圏のアーティストは無条件に受け入れるのでしょうか?」(同)
昨年は、韓国語が記載された日本セブンイレブンの商品パッケージが、さまざまな視点で注目を浴びた。その商品には英語も併記されていたのだが、ツッコミは少なかった。
インターネットの普及、発展によってさまざまなモノが可視化されているが、無意識に形成された価値観が更新されることは難しいようだ。
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