財務省の暴走を止めるには~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』
文部科学省が10月13日に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を、東京地裁に請求した。解散命令請求に必要な継続性、組織性、悪質性の3条件を満たしたからだと言う。政界との癒着が批判されるなか、被害者からの声にようやく行政が重い腰を動かした形だ。
ただ、私は継続性、組織性、悪質性は、財務省にも当てはまると考えている。まずは継続性だ。旧統一教会は1980年ごろから高額献金を受け取り、それが継続しているという。タイミングとしては財務省(旧大蔵省)もまったく同じだ。
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1973年に石油ショックが起きたことで、日本経済は深刻な不況に見舞われた。それを脱却しようと政府は公共事業を中心とした大規模な財政政策を行い、その財源として戦後最初の大規模な国債発行に踏み切った。国債の大部分は10年債だ。石油ショック後に発行した国債の償還期限が迫ってくる。そこで、大蔵省は80年ごろから「財政再建元年」というキャッチフレーズを掲げて、増税路線に舵を切ったのだ。それ以降、増税路線が揺らいだことはない。
第二の組織性もよく似ている。旧統一教会は高額献金を集めるために、共通の手法を用いていると文科省は主張している。教団側は、かつて行われた高額の壺や経典を売りつけるような霊感商法を組織として行っておらず、献金はあくまでも信者の意思に基づくものと主張している。表面的にはその通りだが、本質は変わっていない。この世の人たちはすべて堕落人間で、神の子にならないと地獄へ落ちるという恐怖に基づく支配システムだ。
財務省のやっていることも基本的には同じだ。日本は世界最大の借金を抱え財政破綻が国民生活の破綻をもたらすという恐怖心から、増税や社会保険の増負担を正当化する。
国民から無理やり徴収し評価される…
そして第三の悪質性。文科省によると高額献金や霊感商法などの金銭トラブルで教団の損害賠償責任を認めた判決が32件、賠償額が約22億円に及び、和解や示談を含めると被害者は1550人、解決金などの総額で約204億円の損害を与えたとしている。一方、財務省はどうか。80年度の国民負担率は30.5%だった。昨年度はこれが47.5%と17ポイントも上昇している。国民負担率が80年度のままだったとしたら、現在の国民負担は70兆円も少なかったことになる。国民の被害は、旧統一教会の比ではないのだ。
しかも統一教会は信者だけから献金を集めているが、財務省は国民全体から無理やり徴収している。悪質性という意味では、はるかに罪が重いのだ。
残念ながら財務省は宗教法人ではないので、解散命令を出すことはできない。ただ、暴走を止める方法はある。なぜ、財務省が増税を続けるのかというと、財務官僚の評価が増税すればするほど高まり、よりよい天下り先に行けるという人事制度があるからだ。
また、彼らが大企業や富裕層は増税せず、庶民や中小企業に重税を課すのは、天下り先の提供者が大企業や富裕層だからだ。さらに財務省批判をメディアや評論家が控えるのは、税務調査を恐れるからだ。
だから財務官僚の天下りを全面禁止し、国税庁を完全に財務省から切り離せば、解散命令を出すのに近い効果が得られる。難しい話ではないだろう。
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