万博は中止して本来の目的だけに~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』
再来年に開催予定の大阪万博の会場建設費が、現在の計画より450億円増えて2300億円となることが明らかになった。当初の予算と比べると1.8倍の大幅増だ。建設費用は国、大阪府と大阪市、経済界の三者が3分の1ずつ負担することになっているため、建設費増加の3分の2は、税金が投入される、つまり我々の負担が増えることになるのだ。
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それだけではない。運営経費については入場料で賄われることになっているが、数百億円程度増えると見込まれる会場の警備費は、国が負担することになった。
開催に莫大な経費を投入するにもかかわらず、パビリオンの建設は進んでいない。大阪万博では、50以上の国がパビリオンを出展することになっているが、建設許可申請を出したのは、チェコとモナコのわずか2カ国、万博協会が建物を作って引き渡す「プレハブ方式」を選択した国も1カ国しかない。開幕に黄信号どころか、赤信号が灯っているのだ。
それにしても何故パビリオンの建設が進まないのか。最大の理由は、参加国がやる気になっていないからだ。50年前と比べると万博の意義は、大きく減少している。情報通信の発達で、世界情勢がリアルタイムで伝わるようになったことと、社会の多様化で、人類共通の画期的な技術革新がなくなったことが原因だ。一部の人たちの間では、万博は「オワコン」になったとまで言われているのだ。
それでも、なぜ大阪が万博推進にこだわるのか。それは、カジノ建設の「オブラート」にするためだろう。まず、万博入場者を大量輸送するという名目で地下鉄を延伸する。そして、跡地に建設するカジノのために、その地下鉄を活用するのだ。
また、カジノの周囲には国際会議場やホテルなどが整備され、統合型リゾートにするという。これも、本質を見えにくくするためのオブラートだ。
カジノ建設だけをしては…!?
私はいまからでも、万博を中止して、本来の目的のカジノ建設だけをすればよいと思う。そうすれば、税金投入の必要もなくなるし、関西経済界が負担する会場建設費や割り当てられるチケットの負担もなくなる。もちろん、カジノ建設そのものに対する根強い反対論はある。カジノは射幸性が高く、のめり込んで破産する人が続出するのではないかという懸念があるからだ。それは正しいと思う。
私自身は、40年以上前にラスベガスのカジノに一度だけ行ったことがある。危ないと思って、3万円ほどの現金のみを持って出かけたのだが、その金は帰途にはすべて消えていた。ただ、とてつもない興奮と快楽がいまだに脳裏に焼き付いている。
破産をするほどの被害を受けるのは、頻繁に訪問できる近隣住民だ。私もカジノができたら一度は行くと思うが、通い詰めるほどの時間はない。
関西圏では、カジノ推進を掲げてきた維新を住民が圧倒的に支持している現実があるのだから、その維新の政策によって破産者が続出しても、それは住民の選択の結果と言えるのだ。
世界に対して公約したのだから、いまさら万博開催を中止できないという意見もある。それは一理あるが、だったら万博をやめて、世界のギャンブル博覧会にしたらどうだろう。そうすれば、世界のギャンブル好きが集まって、いま計画している万博よりもずっと盛り上がるのではないか。
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