東芝TOB成立の意味~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』
東芝が、投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)連合による株式公開買い付け(TOB)が成立したことを発表した。これで今後、東芝は非上場化され、モノ言う株主(アクティビスト)に振り回されない経営ができるようになる。
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東芝は15年に不正会計が発覚した後、子会社である米国のウエスチングハウス社が巨額債務を抱え込んだことで、債務超過に陥った。ウエスチングハウスは、06年に東芝が6000億円もの巨費を投じて買収した加圧型原子炉のトップメーカーだったが、福島の原発事故で世界中の原発建設が止まったことから経営危機に陥った。結局、東芝はウエスチングハウスを1ドルで手放すことになり、原発への投資は全損となった。
17年に東芝は2年連続の債務超過による上場廃止を回避するため、6000億円の第三者割当増資を実施。
その資金を出したのがアクティビスト、すなわちハゲタカファンドだった。日本政府は東芝救済に動かなかった。当時は東日本大震災で「反原発」の意識が国民の間に高まっており、原発投資で債務超過に陥った東芝を公的資金で救おうとすれば、国民が納得しなかったからだ。
しかし、17年に東芝が増資を受けた際の発行価格は現在の株価換算で、1株2628円だった。今回のTOB買い付け価格は1株4620円だから、アクティビストは、わずか6年で4548億円のぼろ儲けをしたことになる。
一方、今回東芝を事実上買収した日本産業パートナーズは、国内ファンドではあるが謎の多い組織だ。大株主はみずほグループとNTTデータだが、7割は自社の役職員による持ち株会社だとされている。2兆円といわれる今回の東芝買収資金を用意するには、あまりに頼りない資本構造だ。それでも複数の大手銀行が巨額融資をした背景に、私は政府の影を感じざるを得ない。
“原発は可能な限り低減する”
ここからは、私の想像だが、今回の東芝TOBに際して、政府から銀行団に対して東芝の将来の経営を保証する何らかの示唆があったのではないだろうか。東芝は、経営が悪化して以来、半導体メモリ事業、白物家電事業、オーディオビジュアル事業、医療機器事業など、虎の子の主力事業を次々と手放してきた。その東芝を再躍進させることができる唯一の残された事業は原発事業だけだ。
政府は大手銀行に対して東芝に原発事業の発注を将来にわたって継続するという密約をすることで、銀行からJIPへの巨額融資を引き出したのではないだろうか。
そうだとすれば、公的資金の投入ではないから、国会で追及されることもないし、原発にのめり込んだ東芝を救済するために政府が支援しているという批判を避けることもできる。その一方で、政府は何が何でも原発推進をしなければならなくなる。
安倍政権下でも、日本のエネルギー政策は、「原発は可能な限り低減する」というものだった。ところが岸田政権は、「エネルギーの安定確保と脱炭素は世界的な課題だ。選択肢の一つとして、原子力に向き合うことを決断した」と強調し、国会でも十分な議論もせず、昨年の参院選でも政策を国民に示すことなく、原発の新増設や60年超の運転容認を決定した。この独断的な方針転換は、東芝の不透明な救済と果たして無関係なのだろうか。
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